円の実力、50年ぶり低水準に接近

円の総合的な実力を示す実質実効為替レートが約50年ぶりの低水準に近づいているようで、国際決済銀行(BIS)が17日に公表した10月の数値は68.71となり、1972年並み(67台)の低さになっています。

この原因は、日本の物価上昇率が海外に比べ低く推移したことに加え、輸出競争力を重視し円安となるような政策を進めたことが要因で、かつてとは経済構造が変わり、円安は成長力の底上げに寄与していないようです。

一般的な為替レートは日本と米国など2国間の通貨の関係を示し、実質実効為替レートは様々な国の通貨の価値を計算し、さらに各国の物価変動を考慮して調整するのですが、自国通貨の実質実効レートが高いほど海外製品を割安に購入でき、逆に輸出には不利となります。

円の実質実効レートは、1995年に150の最高値をつけた後、低下が続き、2015年6月には67.6と72年以来の水準まで低下し、21年10月は15年7月以来の低さとなりました。

バブル崩壊以降の長引く景気停滞で、他国と比べ日本の賃金や物価が上がらなかったことが背景となり、賃金や物価が上昇する海外と同様の購買力を保つためには、円の価値を引き上げる必要があったのですが、日本は円高による輸出競争力の低下を懸念し、円高に対処。

95年に円高が進んだ際には日米が協調して大規模な円売り介入を実施し、2013年に始まった異次元緩和で円の価値は一段と下がってしまいました。

21年になると円の実質実効レートは9%下げ、主要通貨で独歩安となりました。

ドルは5%上昇し、ユーロは3%の下落に留まっており、新型コロナウイルス禍からの経済回復過程で、日本の物価が海外と比べて上がらないことが影響し、この結果、円の実質実効レートは約50年前とほぼ変わらない水準になっています。

かつては円安が製造業の輸出競争力を後押しし、経済成長へと繋がったのですが、多くの企業が海外に拠点を移すなどして経済構造が変わり、円安による日本経済の押し上げ効果は弱まり、国内総生産(GDP)に占める製造業の比率は1970年代の35%から、2010年代には20%に低下。

足元では円安が輸入物価を押し上げるデメリットが目立ち、資源を輸入に頼る日本は、東日本大震災後に化石燃料への依存を強め、円安と原油高による輸入金額の増加は、輸入企業の円売りを増やしてさらなる円安圧力になっています。

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