金融界にパーパス経営

金融機関に「パーパス経営」が広がっているのだそうです。

ESG(環境・社会・企業統治)の強化、顧客ニーズや従業員の多様化など社会が急速に変化するなか、ぶれずに貫く自社の存在意義を見つめ直すためのようで、一部には金融機関でありながら「脱金融」に舵を切る動きも出てきているようです。

今、世界中の企業やビジネススクールで「パーパス(purpose)」というキーワードが語られていて、自社の存在意義を明確化し、社会に与える価値を示す「パーパス」が企業経営で注目されています。

MS&ADインシュアランスグループHDは2022年1月にパーパスを公表する方針を固め「グローバルな保険・金融サービス事業を通じて、安心と安全を提供し、活力ある社会の発展と地球の健やかな未来を支えます」とホームページに掲げる予定となっており、日本生命保険は21年度からの中期経営計画で「最も信頼される生命保険会社を目指してお客様・社会からの期待に応え続ける」をパーパスとして社内で掲げています。

また、金融界でパーパスの設定が相次いできており「信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる」というパーパスを打ち出したのは三井住友トラスト・ホールディングス(HD)で、20年5月に、1年間にわたる現場と経営陣の議論の末にパーパスを設定し、脱炭素化や少子高齢化で、従来の銀行セクターとは異なる信託銀行グループとしての社会的要請が高まっていることを背景に、創業当時の原点に立ち返ることを前面に押し出しています。

従来、企業が掲げてきたミッション、ビジョン、バリューなどが「何を」に焦点を当てることが多いのに対し、パーパスは「なぜ」の部分に注目が集まっており、「何を」するかは時によって変わるが、「なぜ」の部分はぶれない軸として残りやすく、このため急速な変化が進む社会の羅針盤としてパーパスが求められているようですね。

東京海上ホールディングスは「お客様や地域社会の”いざ”を支え、お守りする」というのが創業以来の合言葉となっており、今これをパーパスとして前面に出し、4万人以上の従業員のうち、海外従業員が4割を占める同社は、多様な人材を結びつける「横串」としてパーパスが機能しています。

21年1月には初めてオンラインで海外最高経営責任者(CEO)会議を開催し、21の国・地域の38社から約60人が参加するなかで小宮暁社長が「未曽有の状態で価値を発揮するためにはパーパスを共有したうえで、得意分野と独自性を発揮することが大事」と、パーパス・ドリブンの重要性を強調しました。

また、この時流に乗ってパーパスを打ち出すことは投資家や消費者へのメッセージともな理、海外でも掲げ出す金融機関は少なくなく、米投資銀行大手のゴールドマン・サックスは20年1月に初めて開催した個人投資家向け説明会で「持続的な経済成長と金融機会の推進」と打ち出し、気候変動や社会の包括的な成長が同社と顧客にとってリスクとチャンスの両面あるとの意味を込めており、英金融大手のHSBCは「無数の機会を切り開くために」と定めています。

存在意義を見つめる中、従来の金融の枠にとらわれずに事業を再構築する企業も現れており、SOMPOHDは「安心・安全・健康のテーマパークにより、あらゆる人々が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会を実現する」とし、主要事業である保険の色を薄めたパーパスを掲げ、データ事業や介護でも積極的なM&A(合併・買収)を繰り返して多角化を進める裏付けとなっています。住友生命保険が21年7月に公表したパーパスも「社会公共の福祉に貢献する」としています。

デジタル化によって変化を迫られることもパーパスに影響しており、三菱UFJフィナンシャル・グループは23年度までの中期経営計画で「世界が進むチカラになる。」をパーパスに掲げ、これを指揮した亀澤宏規社長は従来の融資を中心とした銀行業ではなく「金融プラットフォーマー」で脱銀行を目指します。

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