IPOに市場の洗礼

2021年の新規株式公開(IPO)は活況が続いていて、今週は監視カメラシステム開発のセキュア(4264)など3社の上場が予定され、年間で125社と2006年以来の高水準となる見通しとなっています。

未上場でじっくりと事業を成長させてから上場する企業が増え、昨年、公開価格の時価総額が1000億円以上をつけた企業はゼロだったのですが、今年は5社と6年ぶりの多さとなっています。

とはいえ、足元では初値が公開価格を下回る銘柄が相次いでおり、先行きには不安も漂っています。

21年は公開時の時価総額上位10社のうち東証マザーズに上場したスタートアップが6社を占め、同じく1000億円以上が5社あった15年は上位10社のうち、ゆうちょ銀行など東証1部企業が6社で、日本でも産業の新陳代謝が進み始めたことを映しています。

上位にはクラウド経由でソフトを提供するSaaS(サース)や人工知能(AI)、フィンテック関連が目立ち、転職サイト「ビズリーチ」などを手掛けるビジョナル(4194)の直近の時価総額は約3600億円と公開価格の2倍となり、旺盛な採用需要を受け、今月9日に22年7月期の連結純利益予想を前期比2.9倍の41億円に引き上げたことが好感されています。

マーケティングや人材管理を効率化するSaaSを手掛けるプラスアルファ・コンサルティング(4071)は主力の人材管理ソフトが21年9月期に前の期比66%増収と高い成長率を示し、株価は公開価格から4割強上昇。

公開規模の大型化で海外マネーの流入も増え、大和証券によれば、海外投資家に株を販売した案件は31社と昨年の16社からほぼ倍増、クラウド監視カメラシステムを通じて現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するセーフィー(4375)の場合、上場時に香港の機関投資家2社が計100億円の株式を購入しています。

しかし12月に入り市場は変調し、24日までに上場した29社のうち12社で初値が公開価格を下回り、22日にマザーズに上場したFinatextホールディングス(4419)は初値が公開価格を23%下回理、林良太社長は「市場からの洗礼と受け止めている。業績を伸ばして公開価格を上回るようにしたい」と話す。23日に上場したエクサウィザーズ(4259)も公開価格を10%下回った。石山洸社長は「マーケットの環境が相当難しいなか、一定の評価をいただいた」と話しています。

その背景には米国の金融緩和縮小に向けた動きにより成長株が調整局面に入っていることがあるとはいえ、日本特有の事情もあり、12月は32社という約30年ぶりの上場ラッシュによって、投資家が吟味する時間が限られ、資金が分散しやすくなっているようです。

22年は110~120社程度のIPOを予想する見方が多く、今年に引き続きSaaS・DX関連や、環境・ヘルスケア関連への期待が高くなっている一方、現在のような市場環境が続けば、IPO時の企業評価は慎重にならざるを得な苦なっていて、23日にマザーズ上場を予定していたZEALS(ジールス)は上場延期を決めています。

未上場時に高い株価で調達している企業も一部にあり、既存株主への配慮から上場を先送りするケースも出てきそう。

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