国税vs大手銀行2行

消費税の不正還付を行ったとして、東京国税局から約104億円を課税処分された免税店運営会社が保有していた不動産を巡り、国税当局が三大メガバンクの2行である、みずほ銀行と三井住友銀行を提訴しました。

税金の徴収と銀行の債権回収を巡る対立で、国税当局が大手銀行を訴えるのは極めて異例なのだそうで、今後の展開に注目が集まりそうですね。

まず根底にあるのが「訪日外国人が免税対象の商品を国内で購入した場合、消費税はかからない」というものがあり、免税店運営会社である宝田無線電機が、金製品を訪日外国人に販売したとして、2016年~17年の間に仕入れ時に負担した消費税約88億円の還付を申告しました。

さきほどのように「訪日外国人が免税対象の商品を国内で購入した場合、消費税はかからない」ということで、事業者が申告すれば仕入れ時に支払った消費税が還付されることになります。

そこで、みずほ銀行と三井住友銀行は、その還付金を担保にして最大計50億円を融資する契約を結んだのだそうです。

東京国税局は、16年9月1日から宝田社への税務調査を開始し、調査の結果、販売実態に虚偽があり、仕入れ先との間で金製品を循環させていたと判断し、約88億円の還付申告のうち約77億円を不正と認定、17年6月30日に重加算税を含め約104億円を追徴課税したのだそうです。

この処分前である17年3月、みずほ銀行と三井住友銀行は宝田社との融資契約に「消費税の還付額が50億円に満たない場合は、宝田社の本社ビルなどに根抵当権を設定する」という条件を追加し、同年6月26日までに宝田社の社長から消費税の還付がなくなり、追加の納税が発生する説明を受けたのだそうです。

こうした事態を受け、2行は課税処分当日の17年6月30日に宝田社の本社ビルなどに根抵当権を登記しました。

その後、国税当局は17年9月に本社ビルなどを差し押さえたのですが、国税徴収法の規定で、担保の売却代金は処分日以前に抵当権を登記した債権者が優先されるため、2行の登記により、国税側の徴収見込み額が7億6千万円から約3300万円に減少したのだそうです。

そこで国税側は訴訟で、宝田社と2行の行為は、国税当局の税金の徴収額が減少してしまう詐害行為に該当すると主張し、登記の抹消を求めています。

根抵当権

根抵当権って、あまり耳にすることはありませんよね。

一般的に知られている抵当権というのは、住宅ローンなどを借りるときに土地や建物に設定する権利で、もし住宅ローンを返済できなくなってしまったときなどに、銀行が土地や建物を差し押さえて競売にかけることができるというものなので、特定の債権が弁済などによって消滅すると、それを担保していた抵当権自体も消滅します。

「根抵当権」は一度その権利を設定したら担保価値をもとに算出した上限額の範囲内で何度もお金の貸し借りができることで、抵当権が借りていたお金を返せば自動的に消滅するのに対し、根抵当権にはそれがなく、極度額の範囲内であれば、何度でもお金を借りることが出来ます。
そして、当事者の合意がない限り根抵当権は消滅しないのです。

なぜこんなものがあるのかというと、一般的な抵当権では、特定の債権が消滅すると抵当権も消滅してしまうため、継続的に銀行から資金を借り入れたり返済したりを繰り返す場合、その都度ごとに、当権を設定したり解除したりするの手間ですし、とても不便です。

そこで、あらかじめ借入れることができる最高限度額を決めておき、その範囲で債権を担保するようにしたのが根抵当権で、正しい使い方であればとてもいい権利なのですが、今回のように国税側からすれば、かなりの痛手となります。

売却による徴収見込み額が約7億6千万円から7億円以上減り、約3400万円になってしまうのですから、黙ってはいられませんよね。

みずほ銀行と三井住友銀行は「係争中につき、回答は差し控える」とコメントしていますが、 一体どうなるのでしょうね。

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